修正いたしましたー。
#アーデラスウードは確定できないので、らしい、となりました。
「本日はお日柄もよく以下省略」
「挨拶はちゃんとしましょうね」
藩王に窘められ、谷坂は、近頃ろくなことしてねぇな、と憤然とした。無論自分にである。
「こんにちは」
殊勝な挨拶をした悪魔は、神聖巫連盟の生活に慣れたのか人の姿をせず、普段どおりの異形をさらしていた。
悪魔の姿を普通の人間には見ることができない。神聖巫連盟には普通じゃない人間で、悪魔の姿に驚く人間は、もういない。最近では豆まきすら手伝ってもらった。
お互いに慣れてしまったものはしょうがない、ここはそういう国なのだ。
ただし、「向こう」もなれている事には間違いないだろう。
クーリンガン。地獄の王の司祭。キャッチフレーズと言うか役職と言うか。
聞いた限りでは悪魔を使役するのも得意そうである。
「クーリンガンと言う方を知っていますか」
単刀直入に聞くと、悪魔はさぁ、と答えた。
本当に知らないのか、知っているのか微妙なところだ。
「国には安倍晴明さんとして入ってまいりますので、式神に関して強くなっているものと思われます。それと、本来のクーリンガンではなく、すり替えられたか改造した可能性があるそうです」
お気をつけください。そう結んで頭を下げる。悪魔もそれに習った。異文化から召喚された彼らは、このお辞儀と言う風習をぎこちない動作で行う。
やはり、はいとは口に出さないか。唇をかんで顔を上げると、双方に茶碗が渡された。
「どうぞ 甘酒です」
藻女藩王、さっきから姿が見えないと思ったら、甘酒の用意をしていたらしい。
「ひな祭りの前に一度作っておきたいと思っていました」
「姫様、今どうやって作ったんですか?」
「味には自信があります」
「おいしいのは確かです」
「それはよかった」
しまった、つっこみを連れてくるべきだったか。
悪魔が飲んでいいんですか、これ。と言う顔をしている。困り顔でも怖い顔だ。
「安心してください 人数分用意してありますし」
藩王はどこからともなくでかい鍋をとりだした。
ずぅん、と地面が揺れた。
「茶碗も人数分ですからね」
―だから、どっから持ってきたんですか。
悪魔が変な顔をした。が、すぐに何か動き出す。
恐ろしげなつめの付いた指をぱちりと鳴らすと、続々と異形が集まりだした。すごいな指パッチン。
茶碗が全て行き渡ると、何百と言う目がこちらを見つめた。
外見評価−20×108柱という恐ろしいを通り越して壮観ですらある光景を目にして、この国の姫巫女は微笑んだ。
声を高く、穏やかに張り上げる。
「クーリンガンは地獄の王の司祭らしいので貴方達を従えさせる力を持っているかもしれません」
はっきりと言ってのける。
先ほどの悪魔が谷坂を少し見て、笑う。
―心が読めるのか。失敗したな。自分の美徳は正直さだけだと思っていたのにまた間違えた。
げー、と少しだけ舌をだし、悪魔には目礼だけして目線を戻す。
藩王の言葉は続く。
「ですが今は本来の存在から手を加えられているようです。
もし、今彼に従えば貴方達も危険です。
クーリンガンとの戦いを収める事が出来たら貴方達に不自由させない暮らしができるように力を入れていきますが、今しばらくお待ちください」
そういって姫巫女は、もう一度微笑んだ。
悪魔たちも微笑み返す。はい、とは言わない。
さっきと同じだ。
同じだが何もかもが違った。
こういう風に守るのか。そう思った。