俺が折り紙なんてガラじゃないと思っていた
〜ある男子の言葉〜
俺が悪いんじゃない。少なくとも悪意はない。だからあれは事故なんだ。こうなるほうがおかしいんだ。
彼は布団の中で身もだえしていた。
自らの業に心を痛めていた。
だって、あの時は…俺は…
次の日、朝。
身もだえしても日常は続く。心を痛める夜が続いても学校には通う。心が痛いから、休む、とは自分的に口が裂けても言わないし、言うつもりがない。ただ、周りから見れば無理をしているのはすぐにバレるが。
「辛そうだな、青田。引きずってんな」
「…何をだよ。言っておくがあれは俺が悪いんじゃない。あれは事故なんだ」
「えー。俺は別にあの事故について言った訳じゃないぜ。」
「ふん、言ってろ」
「どこに行くんだよ」
「ちょっと散歩」
心を休めるために一人になりたい、と思い。行く場所を考え、今日は保健室で涼もうと考えた。保健室は涼しい。一人にもなれるし。
保健の先生が出迎えてくれる。
「あら、いらっしゃい。青田君。一人でくるのは珍しいわね」
「はい。ちょっと一人になりたくて来ました」
「どうぞ。ベット使っていいわよ」
「はい。ありがとうございます」
一人天井を見上げ、考える。
紙を折る、音がする。
「何してんすか?先生」
「折り紙よ。私、実は職人なのよ。折り紙職人って言うの」
「へぇ…。そうですか」
「あなた暇でしょ。ちょうどいいから折りなさい。私が教えてあげるわよ」
「いや、俺、折り紙ってガラじゃないですし」
「ふふん。この折り紙は”あの子”に送るものなのよ。それを聞いても、折らないって言える?」
「……俺が悪いんでしょうか?」
「さぁ?私にも分からないけど。まあ、けど、今は折るか折らないか選ぶことができるわよ。過去はかわらないけどね」
「………折ります。教えてください」
「いい子ね。じゃあまず鶴にしましょうか。教えるわね」
土曜日の朝。
俺は彼女のお見舞いに行った。
彼女はベットの上にいた。
こちらから頭を下げて、挨拶をする。
相手も頭を下げた。
「あの、これ、俺が折りました。」
不器用だが、一生懸命折った千羽鶴は俺の気持ちを伝えてくれた。
作:ヒイラギ
(926字)
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